相続と遺言の問題について
目次
遺言の活用について
遺言があれば遺産はそれに従って分けるのが基本となるためと言えます。
遺言がないと,法定相続分割合を目安に相続人同士で話し合いますが,誰が何を,いくら受け取るかを合意するのは簡単ではありません。そもそも亡くなった人にどんな財産があったのかを調べる必要もあります。通帳を探したり,金融機関に問い合わせたりするのは手間と時間を要します。また,相続人全員の戸籍謄本を集めることなども現実にはかなり大変な作業となります。
遺言では遺言を実行する人を指定することもできます。弁護士などの専門家を指定すれば,費用はかかりますが,相続手続きを代行してもらうこともできます。
遺言の種類(自筆証書遺言と公正証書遺言について)
大きく,本人が手書きで作る自筆証書遺言と,公証役場で作成・保管する公正証書遺言があります。
この他,秘密証書遺言,特別なものとして一般緊急時遺言など民法上他に5種類の遺言方式がありますが,あまり一般的ではないものと考えられるため,ここでは割愛させて頂きます。
①自筆証書遺言について
自筆証書遺言とは,遺言の内容の全文,日付を自書し,署名,押印する方法で作成する遺言のことです(民法968条1項)
自筆証書は全文手書きで,日付の記入,署名,押印が必要となるため,字が書けないという方は,この遺言を作成することは出来ません。代筆といった方法や,パソコン・ワープロでの作成は出来ないので注意が必要です。
費用や手間はあまりかからないのはメリットですが,遺言を開封するには家庭裁判所での検認手続きが必要で,紛失や偽造の恐れもあり,デメリットもあります。
②公正証書遺言について
公証役場などで公証人に遺言の内容を伝えて作成してもらうものです。
作成方法としては,
①証人2人の立会のもとで,遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で話します。
②公証人が,遺言者の話した遺言の内容を筆記し書面にします。そして,その内容を遺言者と証人に読み聞かせ確認します。
③遺言者と証人が,正確に筆記されていることを確認し,各自が署名,押印します。
④最後に,公証人上記方法により作成した旨を記載して署名・押印します。
原本は,公証役場に保管されます。日本公証人連合会という組織が,全国の公正証書遺言をコンピューターにより集中して管理しています。
言語を発することの出来ない方や耳の聞こえない方も利用することが可能です。また,公証役場に出向くことの出来ない方も,公証人に病院や施設に出張してもらい作成することが出来ます。
公正証書遺言の具体的な作成方法やメリットは。
公正証書遺言とは,公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。
公証役場や,公証人という言葉はあまり聞きなれないという方もいらっしゃるかもしれません。
福岡県には,福岡市内で中央区舞鶴,博多区博多駅前,久留米市,大牟田市,北九州市では,小倉北区,八幡西区,田川市,直方氏,飯塚市,行橋市,太宰府市に計11箇所公証役場があります。
詳しくは,福岡の公証役場一覧をご参照ください。
公正証書遺言は,以下の方式で作成することとなります。
・証人2人以上の立会のもと,
・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(「くじゅ」と言います。人に,直接口頭で考えを伝える意味です。)し,
・公証人が遺言者の口述を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させ,
・遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後,各自が署名押印し(なお,遺言者が署名することが出来ない場合,公証人がその事由を付記し,署名に代えることができます。)
・最後に,公証人がその証書は方式に従って作成したものである旨を付記してこれに署名押印すること。
という方式で作成されることになります(民法969条)
公正証書遺言を作成することのメリットについて
・公証人という法律の専門家が関与することで,方式の不備による無効や,遺言内容が意味不明で後日争いが発生するということがほとんどなくなります。
・文字を書くことが出来ない場合であっても遺言を作成できること(文字を自書することが出来ない場合,自筆証書遺言は作成することが出来ません。)
・公正証書の原本は公証人が保管することとなるため,その存在が明瞭で,紛失・改変のおそれがありません。
・自筆証書遺言の場合などとは異なり,検認手続(検認とは,家庭裁判所において行う手続きで,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。)という面倒な手続きを経る必要がないこと。
などが,あげられます。公正証書遺言を作成されたい方が,自宅療養中や施設,病院に入所,入院中の場合などは,公証人により,自宅又は病院に出張してもらうことも出来ます。
公正証書遺言を作成したいが,どうしたら良いか分からない,公正証書遺言を作るため,その内容,文案を考えてほしい等,公正証書遺言について知りたい方は,お気軽に当事務所へご相談下さい。
自筆証書遺言の作成方法や注意点は
自筆証書遺言でありますが,これは自分一人で作成することができる点において,その他の遺言方式と比べ最も簡単な方法であり,また,その作成についても秘密にしておくことが出来ます。
しかし、自筆証書遺言の作成やその保管にあたっては,以下のような注意点があります。
1
ご自身で,遺言の内容の全文と日付及び氏名を書いて(自書),その署名の下に印を押す必要があります(民法968条第1項)
あくまで,自署が必要ですので,パソコンのwordなどのソフトなどで作成することは出来ませんので注意が必要です。
また,字を書くことが出来ないという方も残念ながら,採用することが出来ない遺言方式となります。次に,説明する公正証書遺言などを検討して頂くこととなります。
2
繰り返しになりますが,うっかり落としがちな点として,日付についても自書しておく点があると思います。遺言書作成の年月日が自書されていない場合,遺言書は無効となってしまいます。年月のみではだめなので気を付けてください。実際,当職にご相談された方の中にも,日付が自書されていなかったというケースが多々あります。
遺言者が遺言作成時に遺言能力があったのかを判断するために,日付が必要となりますし,遺言書が2通以上作成されているケースではその前後関係を確定する必要が出てきます(遺言書が2通以上作成されているケースでは,遺言者の意思を尊重するため,一番後(新しい)遺言書が効力を持ちます。)
3
自筆証書遺言の中で,加除その他変更を行う場合は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その場所に印を押さなければ効力が生じません(民法968条第2項)。
4
遺言書が2枚以上になる場合には,割印を押すことも忘れないようにしましょう。
5
検認手続が必要となります(民法1004条)。これは自筆証書遺言に限らず,公正証書遺言以外の遺言の場合には必要な手続きとなります。
具体的には,遺言の保管者は,相続の開始(遺言者の死亡)を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その検認を請求する必要があります。遺言の保管者が無い場合,相続人が遺言書を発見した場合も同様です。
なお,検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続をいいます。遺言の有効,無効を判断するための手続きではありません。
このような,検認を経ずに遺言の執行を行った場合等には,「5万円以下の過料」という制裁もありますので,注意が必要です。
また,自分に不利な内容の遺言がなされている等の理由で,遺言書を破棄したり隠匿したりしたような場合には,相続欠格事由にもなりえ,相続権を失うことにもなりかねませんので注意が必要です。
検認手続きを経ていない自筆証書遺言では,法務局も銀行も相続手続きを受け付けてくれません。
自筆証書遺言を作成したい,また作成したが有効なものか不安などのお悩みのある方は是非,お気軽にご相談下さい。
遺言書作成のポイント~遺産分割トラブルの発生をできる限り未然に防ぐために
1
遺言を作成するにあたって、後々トラブルが発生しないようにするためには、多額の生前贈与などの特別受益や介護などで尽くしてくれた寄与分を十分に踏まえることが重要です。
特別受益や寄与分の問題については、遺言で相当程度解決可能と考えられます。
2
配分は必ずしも法定相続割合通りでなくても構いませんが、相続人の遺留分はできるだけ確保しておくことが重要となります。
*遺留分は、法律で定めた最低限の取り分で、遺言でも侵害できない相続人の持分となります。遺留分を侵された人は、遺留分を取り戻す手続きである遺留分侵害額請求をすることができるため、遺言を作成していてもトラブルとなる可能性があります。
3
不動産がある場合に、安易に、相続人間の共有としないことが重要です。
将来建て替えたり、売却したりするとき共有者全員の同意が必要で、争いの種となりかねません。
4
マイナスの財産(借金など。)がある場合には、プラスの財産をどのように分けるか考える前に、マイナスの財産を引き継ぐ人を決め、その人に対する適切な手当てを行うことが重要です。
仮に被相続人から借り入れを引き継ぐ人がいる場合、金融機関などの債権者が認める収入や資産を持つ必要があるので、最初に決め、その方に対し、適切にプラスの財産を配分することが必要です。
相続人の中に、祭祀(さいし)や介護の必要な妻、まだお金がかかる子どもの面倒を引き継ぐ人についても、負担がかかるため、このような負担をする人についても先に決め、それに対する手当を考えることが重要です。
マイナスの財産、その他の負担を引き継ぐ人を決めたら、そのようなマイナスの要素をまかなえるだけの財産をそれぞれの人に分けるという発想が重要と考えます。その上でプラスの財産が残った場合に分けるようにすれば、結果的に相続人が納得できる可能性が大きくなると考えられます。
5
遺言を遺す場合には、「付言事項」(念のために付け加えて言っておくことくらいの意味。)を積極的に利用し、遺言者がなぜ、このような内容の遺言を遺したのかその理由を記載しておくことが有益です。
もし現在、相続問題に関してお悩みを持たれている場合には、弊所にお悩みをお聞かせください。
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